美濃焼とは、美濃地方(現在の岐阜県土岐・多治見・瑞浪・可児)のやきもの(陶器)です。その始まりには諸説がありますが、現在「美濃焼」と呼ばれる形となったのは、室町時代後期頃と考えられています。
骨董の‘やきもの’のイメージでは、茶碗が真っ先に浮かぶかもしれませんが、実は、日本で国宝に指定されている茶碗のほとんどが唐物(中国産)です。和物(日本産)茶碗で国宝となっているのはたった二つ、江戸時代の本阿弥光悦が作った「白楽茶碗〈不二山〉」と、桃山時代の美濃焼である「志野茶碗〈卯花墻〉」だけなのです。骨董や茶道の世界では、美濃焼はとても愛され続けた‘やきもの’なのがわかるでしょう。
現在も美濃焼は、たくさんの窯元が存在し、国内の大きなシェアを占めている窯業地です。その中で幸兵衛窯は中核をなす窯元。文化元年(1804)に初代加藤幸兵衛が開窯して以来、数々の名品を生み出しています。現当主は七代加藤幸兵衛。その父は人間国宝であった故・加藤卓男(六代)。
「幸兵衛窯」は由緒もあり、現当主も有名な陶芸家ですが、窯元としては、幅広い製品を発表し、工房直営の売店や展示室などを公開するなど、一般に開かれた活動をしています。
工房は基本的には見学することができませんが、窯元の敷地内には、ギャラリーや貴重な古陶磁を展示した資料館、直売のアウトレットもあり、多くの観光客が訪れています。また、毎年4月第2土・日曜日に「蔵出し市」、10月第1土・日曜日に「秋のいろどり市」を開催しています。新作やお買い得品などもでますので、お勧め。
近くの「市之倉さかづき美術館」、徒歩で5分程度です。その横には作陶館もあって、さまざまな体験コースが用意されています。美術館の敷地内には石窯ピザのレストランもありますので、ぜひ。
幸兵衛窯では、伝統的な美濃焼の器と、現代的な感性で作られる新しい作風のものがあります。また先代の加藤卓男がはじめた古代ペルシア陶器の鮮やかな色彩を再現し、新に昇華した三彩や色絵などもあります。もともと美濃焼は技法が多彩なのが特徴で、乳白色にほんのりと赤身をおびた「志野」や、緑を基調とした「織部」、しっとりした黄金色の「黄瀬戸」、さらに幸兵衛窯では青で絵付けした「染付」や、赤や金を使った「色絵」などもありますので、バラエティに富んでいると言えるでしょう。目移りして困ってしまう初めての方には、セットものを探すより、まずは自分用の器として一番日常的に使うもの、例えば、飯茶碗や湯呑、コーヒーカップ、酒器などから、お気に入りの1点を探してみるのがお勧めです。
幸兵衛窯 | 岐阜県多治見市市之倉町4-124 | |
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http://www.koubei-gama.co.jp/ | ||
アクセス | お車の場合 | 中央自動車道 多治見I.C.より約20分 |
公共交通の場合 | JR多治見駅よりタクシーで約15分 | |
入場について | ★予約不要 | 気軽にお立ち寄りいただけます |
営業時間 | 9:00〜17:00(日祝・第2・4土曜日は10:00〜) | |
休日 | 夏季休暇、年末年始、特定休日 | |
施設 | 工場(工房)見学 | 公開していません |
展示・見学 | 幸兵衛窯本館(ギャラリー、食器展示室など) 古陶磁資料館(ペルシャ陶器、中国・朝鮮・美濃古陶の展示) 工芸館(五代と七代(当代)加藤幸兵衛作品の展示) |
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売店 | 常設蔵出し市(工房直売のアウトレット) 食器展示室(幸兵衛窯本館内) |
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飲食 | サロン壺中洞(休憩室) | |
体験 | 幸兵衛窯作陶館:手びねり・ろくろ体験コース、下絵付け体験コース、モザイクタイルコース | |
関連施設 | 市之倉さかづき美術館(敷地内にはレストランもあります) |
幸兵衛窯のある岐阜県多治見市市之倉は、美濃焼の窯元が多く集まっているエリアです。「市之倉オリベストリート」と名付けられており、「さかづき美術館」に観光マップが用意されていますので、そこを起点に、窯元めぐりを楽しまれることがお勧めです。
ちなみに、岐阜県は明治以降、産業としての窯業が盛んになり、地域によって器種を分けて発展させました。市之倉は盃、土岐の湯呑、駄知の丼、下石の徳利といった具合です。現在は各地でいろいろと作っていますが、市之倉で明治大正期の骨董品探しをするなら、まずは盃です。
やきもの以外で多治見の有名な名所と言えば、「虎渓山永保寺」でしょう。鎌倉時代に開山した名刹です。観音堂と開山堂は国宝、庭園は国の名勝に指定されています。